【産経抄】2018-11-27
「日本には選挙があって大変ですね」「25年間に11回選挙をしました」。1972年9月、田中角栄首相が日中国交回復のために訪中した際、毛沢東主席との間で、こんなやりとりがあったそうだ。
▼確かに共産党一党独裁の下、指導者は選挙の心配をする必要はない。関心があるのは、中国と利害関係のある他国の選挙である。自国の一部とする台湾ならなおさらだ。
▼先週末に投開票された統一地方選挙で、与党の民主進歩党が惨敗し、中国に対する融和政策を掲げる野党・国民党が票を伸ばした。蔡英文総統は責任を取って、民進党の主席を辞任した。約1年後の次期総統選での出馬さえあやぶまれる事態である。
▼「民衆の願いを反映している」。中国政府はまるで「勝利宣言」のような趣旨の声明を発表した。今年に入って、マレーシアやインド洋の島国モルディブの選挙で、中国寄りの政権が敗れてきた。それだけに、喜びもひとしおであったのだろう。
▼日本として看過できないのは、住民投票の結果である。東京電力福島第1原発事故から始まった福島など5県産食品の輸入禁止の継続が、賛成多数で成立してしまった。東日本大震災に際して台湾からは、200億円を超える義援金が送られてきた。日本を訪れる観光客も年間400万人を超えているだけに、残念でならない。
▼もともと世論調査では、福島産の食品への不安を訴える割合が高かった。本来、科学的根拠に基づき議論すべき事柄が、反日団体によって政治問題にすり替えられた面もある。ともかく規定によって今後2年間は禁輸が続く。同様の措置を取ってきた中国は、激化する米中対立の影響か、緩和を検討し始めた。対日関係でも、台湾は置き去り状態になりかねない。