2018年11月13日火曜日

【産経抄】2018-11-13

【産経抄】2018-11-13


 「生き腐れ」という言葉があるほど、サバは傷みが早い。とはいえ冷蔵庫がない時代でも、京都の庶民は若狭湾で取れたサバを堪能できた。「鯖街道」のおかげである。

 ▼一塩したサバは小浜に集められ、丸一日かけて担いで運ばれた。京都に着く頃に、ちょうどいい塩加減になる。「鯖街道を国際宇宙ステーション(ISS)までつなげよう」。実習での長いサバ缶づくりの歴史を誇る旧小浜水産高で、このスローガンが生まれたのは平成18年である。

 ▼きっかけは、食品製造の衛生管理システム「HACCP(ハサップ)」の取得だった。ハサップが宇宙食の基準となっているのを知った生徒たちによって、挑戦が始まった。無重力状態で汁が飛び散らないよう地元のくず粉を加えるなど、試行錯誤が続いた。

 ▼25年には現在の福井県立若狭高に統合される。それでも先輩から後輩へ受け継がれてきた研究が、ついに実を結んだ。開発した「サバ醤油味付け缶詰」が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「宇宙日本食」に決定した。これまで主に大手食品メーカーの製品が認証されてきた。高校が参加するのは、もちろん初めての快挙である。

 ▼昨日は宇宙飛行士の若田光一さんが学校を訪れて、生徒に認定証を授与した。JAXAはその前日、ISSでの実験試料を収納した小型カプセルの回収を果たしたばかりである。カプセルはISSに物資を運んだ無人補給機「こうのとり」から放出され、南鳥島沖に着水していた。

 ▼こうのとりの開発に着手してから21年、日本は初めてISSからの物資の回収に成功した。将来の有人宇宙船開発につながる技術でもある。日本人飛行士が、日本の宇宙船で和食を楽しむ。そんな夢にほんの少し近づいた。