2018年11月25日日曜日

【産経抄】2018-11-25(日)

【産経抄】2018-11-25(日)


 大阪在住の方々には聞き捨てならない言葉だろう。カナダ生まれの社会情報学者、マクルーハンが言っている。「万国博覧会は過去のもの」。どういうこっちゃねん-と青筋を立ててはいけない。およそ半世紀前、1960年代後半の警鐘である。

 ▼発達したメディアにより世界は一つにつながる。情報が行き交う時代に、工業品や芸術品を展示室に並べるだけの形式はもう古い、と。人々の旺盛な知的欲求を、低く見積もったらしい。約6400万人もの来場者を集め、説を打ち消したのが70年大阪万博だった。

 ▼万博はしかし、70年を境にして退潮の一途をたどっている。地球の隅々を高速通信網が覆う時代を、かの学者が予見していたかどうかは寡聞にして知らない。先端技術による非日常の空間を世界に発信した大阪万博のやり方でさえ、もはや「過去のもの」とされる。

 ▼大阪が再び開催権を勝ち取った2025年の万博では、長寿社会の実現など地球規模の課題解決に挑むという。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」と壮大である。人工多能性幹細胞(iPS細胞)など、生命科学の拠点を構える関西ならではの試みだろう。

 ▼松井一郎府知事は「これまでの万博の常識を打ち破る」という。前回の大阪万博には、アポロ12号が持ち帰った「月の石」があった。通信機器の画面をなぞれば世界をあらかた知ることができる時代に、人の好奇心をくすぐる次の一手とは何か。これは難題である。

 ▼地盤沈下といわれて久しい関西だが、会場の夢洲(ゆめしま)にはカジノを含む統合型リゾート施設の誘致計画もある。万博の次を見越した勘定は、培われてきた商人気質の本領だろう。7年後、「もうかりまっせ」という関西発の凱歌(がいか)も聞きたいものである。