2018年11月1日木曜日

【産経抄】2018-11-01

【産経抄】2018-11-01


 「いつの間にか日本は実質的に世界第4位の『移民大国』になっていた」。昨日の小紙談話室の投書から引いた。疑問を抱く読者がいたはずだ。安倍晋三首相 は、「移民政策を取らない」と断言しているではないか、と。

 ▼おそらく筆者の念頭にあるのは、経済協力開発機構(OECD)の統計である。2016年では、日本に移住した外国人は42万人に達し、ドイツ、米国、 英国に次ぐ世界第4位となった。

 ▼在住外国人は、国連の定義では移民となる。確かに、観光客が訪れるはずのない住宅街でも、外国人の姿が目立つ。コンビニや飲食店で、彼らと言葉を交わ さない日はない。

 ▼そんな「移民大国」であっても、少子高齢化に伴う人手不足はとうてい解消できない。そこで政府は、さらに多くの外国人を受け入れようと、新たな在留資 格を創設する法改正を目指している。ただ、反対の声も根強い。治安の不安や文化の違いに起因する地域住民との摩擦など、社会に与える影響があまりにも大き いからだ。

 ▼外国人移住者1位のドイツの現状はどうか。「欧州の盟主」といわれたメルケル首相は3年前、100万人以上もの難民を引き受ける決断を下した。当初は 支持していた国民も、犯罪やテロが起こるたびに不満を募らせてきた。メルケル氏は経済界の要請を受けて、外国人労働者の就労をさらに容易にする政策を進め ようとしている。深刻な人手不足で悩むのは、ドイツも同じである。

 ▼与党党首の辞任と任期限りでの首相引退を表明したのは、その矢先だった。難民・移民問題をめぐる政権内の混乱と、相次ぐ地方選の敗北が理由である。政 権の行方は危うくなった。「ドイツを見習え」ではなく、「ドイツの轍(てつ)を踏むな」ではないか。