2018年11月23日金曜日

【産経抄】2018-11-23

【産経抄】2018-11-23


 ソウル近郊の龍仁(ヨンイン)市にある法輪寺(ポンリュンサ)(尼寺)の境内に縦に倒されたままの石碑がある。先の大戦で日本兵として戦死した、朝鮮人兵士の「帰郷祈念碑」である。韓国通の女優、黒田福美さんが、「魂を故郷に帰したい」と発案して、10年前に完成した。

 ▼当初は映画「ホタル」のモデルになった特攻隊員、卓庚鉉(タク・キョンヒョン)さん(享年24)の故郷に近い南部の町に、遺族の同意を得て建立するはずだった。ところが、反日団体の妨害で除幕式が開けない。

 
 ▼法輪寺に移されてからも、団体は撤去を迫った。石碑が倒れているのは、団体による損壊を恐れた住職の計らいであった。その顛末(てんまつ)は、『それでも、私はあきらめない』(ワック)にくわしい。

 ▼韓国政府は、2015年12月の日韓合意に基づき設立された、慰安婦財団の解散を発表した。元徴用工と主張する韓国人への賠償を日本企業に命じた最高裁の判決には、何の対応も示していない。日本海では、韓国海洋警察庁の警備艦が日本漁船に対して、理不尽な操業中止を要求していたことがわかった。日韓漁業協定で、操業が認められている海域である。

 ▼国同士の大切な約束、決まり事が、韓国政府によって石碑のように無残に引き倒されていく。日韓関係の一層の悪化を懸念する声は、反日団体の暴走とそれに迎合するメディアの論調にかき消される。「モンスター化する市民団体によって、国家のかじ取りができなくなる」。黒田さんは、30年以上も付き合ってきた韓国の行く末が心配でならない。

 ▼それでも本の題名の通りあきらめないで、韓国の魅力を講演で語り続けている。ただ、日韓友好のために汗をかいてきた人たちの間では、さすがに「あきらめ」の声も上がり始めているのではないか。