2018年11月21日水曜日

【産経抄】2018-11-21

【産経抄】2018-11-21


 昨日に続いて、番付について書く。何より江戸の庶民の関心を引いたのは、当時の金持ちのランキング、いわゆる長者番付であろう。たとえば「新板大江戸持○長者鑑」と題した番付は、170人の富豪を紹介している。

 ▼主催者となる「勧進元」を務めたのは、「越後屋八郎右衛門」、江戸、京都、大坂に呉服屋を構える日本一の豪商である。江戸研究家の菅野俊輔さんによると、年間収入は、現在の貨幣価値で17億5500万円に達していた(『江戸の長者番付』)。

 ▼昭和25年に始まった高額納税者の公表も、長者番付と呼ばれた。平成18年に廃止されなければ、日産自動車の会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)も主役として名を連ねただろう。有価証券報告書によれば、年間約10億円と八郎右衛門クラスの報酬を受け取っていた。

 ▼東京地検特捜部の調べでは、それが過少申告の疑いがある。実際の金額は記載の倍近かったというから、驚きを通り越してあきれてしまう。日産側が海外4カ国で購入した住宅を無償で利用していた疑惑も浮上している。ゴーン容疑者による、会社の私物化の実態が暴かれつつある。

 ▼人もうらやむ巨額の報酬を得ながら、なにゆえ不正を重ねて、さらなる荒稼ぎをもくろんだのか。理解不能である。贅沢(ぜいたく)な生活を送っていた江戸時代の豪商たちも、凶作や飢饉(ききん)が起これば、貧民に金品を施した。その金額や内容を比べた「施行(せぎょう)番付」も発行された。

 ▼ゴーン容疑者が、経営危機に陥った日産自動車に乗り込んだのは19年前、45歳の時だった。強烈なリーダーシップを発揮して、業績のV字回復を実現する。罪に問われることがなければ、「平成のカリスマ経営者番付」で、大関に挙げられてもおかしくなかったのに。