2018年11月15日木曜日

【産経抄】2018-11-15

【産経抄】2018-11-15


 「日本の文化は米づくりのうえにきずかれ、山や川の自然も、農民により、米づくりを通して守り育てられてきたのでした」。評論家の富山(とみやま)和子さんは、『お米は生きている』(講談社)の後書きに書いている。

 ▼ところが、日本人の米離れが進み、海外からの食糧の輸入は増えるばかりだ。農業に従事する人たちの高齢化も、深刻な問題である。米づくりが廃れたら、山紫水明の国土は荒廃し、農村の姿は一変してしまう。そんな危機感を抱きながら30年間編集を続けてきたのが、「日本の米カレンダー」である。

 ▼富山さんは毎年、日本全国の季節感あふれる田園風景のカラー写真を約1万枚集めてきた。そのなかから12枚を選んで、詩情豊かな解説文をつづる。ほぼ1年がかりの作業となる。海外のファンも多いため、英訳も付けた。皇后陛下はカレンダーを額に入れて、御所に飾られているそうだ。富山さんは皇后さまから、英語表現について問い合わせの電話を受けたことがある。

 ▼届いたばかりの平成31年版のカレンダーを早速めくってみる。2月の写真は、霊峰八海山を見はるかす、越後平野の雪景色が選ばれている。長年にわたる農民による命がけの水抜き作業がなかったら、この穀倉地帯は生まれなかったと、富山さんに教えられる。

 ▼5月は、石川県輪島市の千枚田、日本で初めて世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」のシンボルである。棚田が世界の注目を集めるきっかけを作ったのも、このカレンダーだった。

 ▼平成の終わりとともに、富山さんはカレンダー制作から引退する。瑞穂(みずほ)の国の美しい風景が永遠に保たれるのを祈るばかりだ。カレンダーの問い合わせは、国際カレンダー(03・5829・4100)まで。