2026年4月10日金曜日

「失われた30年」と日本

 「失われた30年」と日本の経済の未来:なぜ今、政策転換が必要なのか


テレビやマスコミがトランプ関税や物価上昇の不安を煽る報道は、時に過剰に見えるかもしれませんが、その背景には、私たちの生活に直結する経済問題への関心の高さがあります。しかし、歴史を振り返れば、物価は時代とともに上昇していくのが自然な流れであり、今回の関税問題もその一環と捉えることができます。

重要なのは、国内の物価と給与が連動していれば、生活実感としての「豊かさ」は維持されるという点です。例えば、アメリカと日本でビッグマックの価格と月給を比較すると、月給に占めるビッグマックの割合はほぼ同じです。これは、各国の物価水準に合わせて給与も形成されているため、自国内での消費においては、所得の絶対額が異なっても「感覚的な差は小さい」ことを示唆しています。

問題は、この均衡が国際的な視点で見ると崩れていることです。日本の給与水準は欧米に大きく劣り、円安が重なることで、日本人が海外で消費する際の購買力は著しく低下しています。これは、日本人の実質的な豊かさが国際的に見て相対的に低下していることを意味します。

「失われた30年」と呼ばれる日本の長期停滞期においても、失業率が極端に悪化しなかったことは事実です。これは、終身雇用制度や企業の雇用維持努力、非正規雇用の拡大といった日本独自の雇用慣行が大きく影響しました。しかし、この安定は、賃金の上昇抑制や経済成長の鈍化という大きな代償を伴うものでした。

この30年の停滞は、多くの識者が日本政府、特に財務省の緊縮財政と、日本銀行の金融緩和の遅れと不徹底が引き起こした「人災」であると指摘しています。デフレが深刻化する中で、需要を喚起するための財政出動が不十分であったり、逆に消費税増税といった緊縮策がとられたりしたことが、経済をさらに冷え込ませ、デフレを長期化させました。世界的な経済危機時には日本経済が比較的安定していた一方で、他国が積極的な財政・金融政策で力強く回復・成長したのに対し、日本だけが低成長に甘んじた事実は、政策の違いが経済の命運を分けたことを明確に示しています。

日本経済は、世界ランキングでは上位を維持しているものの、それは過去に築き上げた産業基盤と、企業の海外投資による収益が支えている側面が大きく、国民一人ひとりの賃金や購買力に十分に還元されていません。

現在、日本経済に賃上げの兆しが見え始めている中で、再び財務省や日銀が過去の政策の誤りを認めず、性急な財政健全化や金融引き締めを画策すれば、せっかく芽生えた回復の動きが摘み取られ、デフレ逆戻りのリスクが高まります。トランプ関税のような外部要因による物価上昇は、企業がこれを適切に価格転嫁し、その利益を賃上げに繋げることで、経済全体の好循環を生み出す原動力とすべきです。企業は値上げを恐れるべきではなく、健全なインフレと賃上げの連動を意識する必要があります。

このままでは、人口減少と相まって、日本の豊かな未来は絵に描いた餅となり、国際的な影響力も低下しかねません。私たちは、政府や日銀の経済政策を監視し、批判し、そして変革を求めていく必要があります。国民一人ひとりが経済政策に関心を持ち、声を上げることこそが、失われた豊かさを取り戻し、日本の未来を築くための鍵となるでしょう。