2018年12月18日火曜日

【産経抄】2018-12-18

【産経抄】2018-12-18


 三菱財閥の創始者、岩崎弥太郎の孫にあたる沢田美喜さんが、神奈川県大磯町にエリザベス・サンダース・ホームを開いたのは、昭和23年2月である。進駐軍の兵士と日本人女性との間に生まれた孤児を救うためだ。

 ▼財閥解体で物納した岩崎家の別荘を買い戻して敷地とした。ホームの名前は、最初に寄付をしてくれた英国人女性からとった。当時は、混血孤児に対する偏見が強かった。沢田さんが町を歩いていると、しばしば罵声を浴びせられた。

 ▼「町の繁栄の邪魔をするホームをダイナマイトで吹き飛ばしてしまえ」。それでも約10年後には、周囲の変化を記せるようになった。「町の人々の目も、このごろはやさしいいたわりに光るのを見るようになった」。

 ▼ブランドショップやおしゃれな飲食店が並ぶ東京都港区南青山に、児童相談所を含む複合児童施設を建設する計画がある。先週末に開かれた説明会は、反対する近隣住民の怒号が飛び交い大荒れとなった。「なんで青山の一等地で、そんな施設を造らなきゃならないんですか!」「港区の価値が下がるんじゃないか」。区の説明不足に原因があるにしても、とても共感できない。

 ▼「むしろ住民の怒号の方が、ブランドイメージを下げたのでは」。ワイドショーで土地の鑑定士が述べたコメントは、まさにその通り。もちろん、建設に理解を示す住民もいる。南青山に限った問題ではない。児相の開所計画に住民が反発するケースは、全国で相次いでいる。

 ▼エリザベス・サンダース・ホームでは今年5月、70周年記念式典が行われ、卒園者が昭和55年に亡くなった沢田さんを偲(しの)んでいた。敷地内の沢田美喜記念館は一般公開されている。ホームは今や大磯のブランド力の一つである。