【産経抄】2018-12-17
明治日本の軍事費の割合は、戦争をしていない時でも、歳出の30%近くを占めていた。だからといって、国民が重税にあえいだわけではない。では、軍事費を何でまかなったのか。
▼元国税調査官の大村大次郎(おおじろう)さんによると、明治政府が創設した酒税だった。酒を買ったときだけに課せられるので、国民の負担はそれほど大きくない。日清戦争勃発時も、増税することなく酒税だけで戦った(『お金の流れで読む日本の歴史』KADOKAWA)。
▼酒税は、現在でも国の大きな財源の一つである。来年10月には、消費税率10%への引き上げが予定されている。同時に導入される軽減税率制度でも、酒類は対象とならない。毎日晩酌を欠かさない小欄も、甘んじて受け入れる。何事もお国のためである。ただ「みりん」の税率も、十数%のアルコール度数を理由に10%に上がるのは、いかがなものか。
▼糖類などから作られる「みりん風調味料」は、8%への据え置きが決まっている。料理人や主婦はとうてい納得できまい。その他、水道水とミネラルウオーター、外食と持ち帰りなど、適用と適用外の不可解な線引きが、制度をますますわかりにくくしている。同じ制度を導入した欧州でも、定着するまで数十年かかった。小売店や飲食店の現場での混乱は避けられない。
▼大村さんは日本の歴史を振り返って、「いつの時代でも税制はそれなりによくできていた」という。たとえば古代にも、「賑給(しんきゅう)」と呼ばれる高齢者や貧困者に米などを支給する、社会保障の仕組みがあった。
▼消費税増税は、社会保障の充実が目的だったはずだ。軽減税率や景気対策のばらまきが必要というのなら、そもそも何のための増税か。誰もが抱く疑問である。