【産経抄】2018-12-06
「外国人からみて日本の民主主義は絶滅寸前だ」。今年3月のネットニュースにこんな見出しの記事が掲載されていた。森友スキャンダルでは、首相官邸と国会周辺で小規模のデモが起こっただけ。
▼デモで朴槿恵政権を倒した韓国の活気ある民主主義とは、対照的だというのだ。著者は在日フランス人ジャーナリストである。確かに、1789年の革命で民衆が自由と人権を獲得して以来、デモはフランスが世界に誇る伝統行事である。
▼長く小紙のパリ特派員を務めた山口昌子(しょうこ)さんによると、大小あわせて年間3000回にも及ぶ。「デモやストを決行する際のなんと生き生きとした表情と手際の良さか」と、普段のフランス人とは別人のような姿に感心していた。
▼先月から続いているデモは、燃料税増税への反発がきっかけだった。道路作業員が着用する「黄色いベスト」がシンボルとなっている。参加者の一部が暴徒化し、放火や略奪などの狼藉(ろうぜき)を働き、逮捕者やけが人が相次いだ。デモの圧力によって政権が危機に陥り、政策が変更される。この繰り返しがフランス政治の特徴だった。
▼今回もマクロン大統領は結局、増税の棚上げに追い込まれた。昨年5月の就任以来、初めて主要政策の転換を余儀なくされた。それでも、デモ収拾のめどは立っていない。増税の完全撤回やマクロン氏の辞任まで要求している。マクロン氏の肩を持つつもりはないけれど、政治の混乱のつけは、やがて国民にまわってくる。EUの弱体化にもつながりかねない。
▼観光大国としてのノウハウや少子化を食い止めた政策など、まだまだフランスから学ぶことは、山ほどある。ただ、デモで国政が左右される「街角民主主義」だけは、いただけない。