【産経抄】2018-12-02(日)
トランプ米大統領はスマートフォンを3台持っているという。全て 「iPhone」で2台は機密保全に穴のない公用である。大統領はしかし、無防備な私用の1台で人と話すのをやめない。会話が中国に盗聴されている、と米 紙は10月に報じた。
▼折しも貿易戦争のさなか、中国も抜け目ない。外務省報道官が「フェイク(偽)ニュースだ」と本家のお株を奪っている。これがオチなら笑えたものを、後 が蛇足だった。「iPhoneが不安なら、華為技術(ファーウェイ)の携帯電話に切り替えたらいい」と。
▼華為技術は、日本など世界に市場を持つ通信機器大手である。補足すれば「中国政府の関与が色濃く、安全保障上の問題がある」と、米政府が製品を使わぬ よう同盟国に求めている。「華為技術に替えたら?」は聞きようによって始末の悪い冗談と取れなくもない。
▼日本でも普及が進む中国系企業の電子決済は、中国だけで延べ13億6千万人が利用する。決済の履歴は、利用者個々の信用度の格付けに流用されるという (『二〇二五年、日中企業格差』PHP新書)。国民統制を狙う政府が裏で糸を引く構図は、想像に難くない。
▼同じ中国の中興通訊(ZTE)とともに政府の威光をたのむ華為技術は、高速大容量の次世代通信規格「5G」で先端を行く。その2社を、オーストラリア とニュージーランドの両政府は、国内通信網の整備から締め出した。この危機感が日本政府にあるだろうか。
▼日本のパソコン市場も中国の息がかかった製品は多い。通信環境を含め、わが国のサイバー空間は危険な足場の上に成り立っている。中国企業に含むところ はないものの、行き着く先に何が待つのか、ユーザーの想像力と判断力は問われていよう。