第39回
「兎丸無念」
1171(承安元)年12月。遮那王(のちの義経:神木隆之介)は 京・五条大橋の上で、弁慶(かつての鬼若:青木崇高)と鉢合わせする。遮那王を、平家の密偵・禿(かむろ)だと勘違いした弁慶は容赦なく斬りかかる。それ をたくみにかわす遮那王との攻防の末、弁慶は目の前の少年がかつて世話をした常盤(武井咲)の子・牛若だと気づき、思わず抱きかかえた。
大輪田の泊(神戸港)の改修をおこなう平清盛(松山ケンイチ)は、宋 国の使者と後白河法皇(松田翔太)の面会を成功させ、次は宋の高官を迎え、正式な交易を始めたいと考えていた。大願成就のために行った万灯会(まんとう え)では、松明(たいまつ)の明かりを眺めながら、泊(とまり)の改修を一任している兎丸(加藤浩次)が民の信頼厚いことを実感。工事も順調に進んでいる ことに安堵(あんど)していた。
しかし兎丸は、禿を使った時忠(森田剛)の手荒なやり口と、それを黙 認し続ける清盛に不満を募らせ、禿を野放しにすれば、痛い目を見るぞと、清盛に苦言を呈す。一方、福原での万灯会に招かれた西行(藤木直人)は、その後京 の時子(深田恭子)を訪ね、清盛への不安な思いを吐露するのだった。
やがて清盛のもとに、宋の皇帝の名代とも言える宋・明州の長官が、3 か月後に福原を訪れるという知らせが舞い込む。清盛は、それまでに泊の改修を完了せよと兎丸に命じる。早くても完成に半年はかかると見立てていた兎丸は反 発するが清盛の意志は固かった。兎丸たちは何とか間に合わせようとするが、無理に急いだため、けが人が続出する。それでも現場の声に耳を貸さない清盛に、 兎丸はいよいよ爆発。自らの利を追求しているだけだと清盛を責め、仲間とともに京に帰ってしまう。
五条大橋の下で仲間たちと酒を飲む兎丸。妻の桃李(柊瑠美)は仕事を 続けるように説得するが、兎丸は何十年にもわたる清盛との因縁や信頼関係を思い出し、裏切られた悔しさと悲しみにとらわれていた。そして平家をののしりな がら酒を飲みつづけ、一人になった兎丸の前に禿があらわれた。悪事をやめるように説得する兎丸に禿は襲いかかった。
行方不明になったという兎丸を探しにきた清盛は、すでに息絶えていた 兎丸を発見する。そこには禿の仕業だとわかる赤い羽根が無数に残されていた。清盛は無言で死体を抱きしめた。悲しみにくれる平家一門の前で、兎丸の葬儀を 盛大におこなうよう命じた清盛の目に禿たちの姿がうつる。清盛を尊敬のまなざしで見つめる彼らには罪の意識はまったく感じられない。清盛は自らの行いを悔 い、時忠に禿を始末するよう命じた。
亡き兎丸への思いや、自らが進む修羅の道を反省していた清盛は、難航 する工事への対処として、海に経文を書いた石を沈めることを思いつく。経文とともに兎丸の志も海に沈め、新しい泊の礎にしたいと考えたのだ。それは人柱と いう無慈悲な風習を避けることでもあった。そして清盛や兎丸の家族や部下たちの目の前で、経文を書いた大量の石を積んだ船が海に沈んでいった。
やがて清盛は一年をかけて大輪田の泊を完成させ、宋国の使者を迎える ことができたのである。
平清盛が生きた平安時代末期